漢方治療について

紅葉の雄峰

くすりの富山と漢方診療

「くすりの富山」の歴史は江戸時代にさかのぼります。
二代目富山藩主の前田正甫公が江戸城内で腹痛を訴えた福島の藩主に、胃腸薬である「反魂丹」を分け与えたところ腹痛が立ちどころによくなったとのことで、富山のくすりが日本中に広く知られるようになりました。
その後、富山の売薬という特殊な販売方式を用いて、富山の薬が全国に配置されていきます。
さらに富山には製薬企業も多く、綺麗で豊富な立山の雪解け水が薬の生産の一翼を担っています。
スイスのバーゼルという都市には古くから世界的に有名な製薬会社が集まっています。
アルプス山脈を従えるスイスと立山連峰を望む富山では、地形的な共通点があり「くすりの富山」として発展してきた背景には、地理的要因もあると考えています。
富山大学には、和漢診療学講座と和漢薬研究所という医学と薬学との研究施設が併設されており、和漢薬に関する最先端の情報発信の拠点となっています。
国立大学において、このような医学が一体となった研究機関が配置されているのは富山大学が唯一です。
このような歴史的背景があり、和漢薬に関する最先端医療の情報を発信できる薬都富山で医療ができることはとても特別なことだと感じています。

当院での漢方治療

ひとりひとりの身体にあった漢方薬を選択するために、漢方には特有の診察法があります。それは四診といい、望診、聞診、問診、切診の4種類に大別されます。
望診とは視覚による情報収集で、顔色や舌の所見などから患者さまの病態を把握します。
聞診は、聴覚、嗅覚により情報収集を行うことです。口臭がある場合、肺や、消化器系の状態を把握することも聞診になります。 問診は、患者さんの訴えを丹念に聞き、漢方的な病態を把握することです。切診は直接患者さまの身体に触れ、脈をとったり、お腹を見たりすることで、患者さまそれぞれの状態を把握していき、治療薬選択の参考にしていきます。四診の中で、実際に患者さんの診察をして得られた情報は、正しい漢方薬を選択するために極めて重要ですが、それにもまして、私は問診からの情報はとても大切だと感じています。症状発現のきっかけになった事柄を理解することで重要な問題点にたどり着くことがあるからです。
ご自身の心の奥にある不安や悩み、または、症状に直接関係なさそうなささいなことでも、治療薬選択の大きなヒントになることもあります。
そのため、当院では、初診時に多くの時間を問診に割き、患者さまの状態把握に努めています。